「下浦石」でできている天草の石橋3選
天草の石橋
熊本は石橋が数多く残っていることで有名ですが、天草にもいくつかの石橋があります。これらの橋は「下浦石」を材料としていることをご存じでしょうか。下浦石は良質の石材なのです。この石を使った天草の石橋「祇園橋」「施無畏橋」「楠浦の眼鏡橋」を紹介します。
下浦石とは
天草市下浦町は下浦石と呼ばれる石材の産地です。石材の種類としては砂岩で、加工がしやすい特徴があるそうです。1760年(江戸時代)に松室五郎左衛門という人がこの地に石工技法を伝えたのがはじまりで、それ以降たくさんの石工職人を輩出している町なのです。
下浦石と下浦石工の技術は、天草はもちろん、九州、四国、中国地方までも活動の場を広げていました。長崎オランダ坂の石畳、大浦天主堂の建築、軍艦島の石垣護岸や三角西港護岸など明治の産業革命の一端を担っていました。
下浦町の国道266号線脇には石碑が建てられ、本渡の「祇園橋」のミニチュア版も展示してあります。
それでは、天草石橋3選の紹介をしましょう。
祇園橋(国指定重要文化財)
天草市船之尾町を流れる町山口川に架けられている「祇園橋」。長さ約29m、幅約3m。
江戸時代後期に、天草島原の乱後200年を記念して造られました。祇園社の前に架けられているためこの名前となったそうです。石橋というと眼鏡橋を思い浮かべますが、これは石造桁橋(多脚式)で珍しく、平成9年に国指定重要文化財に指定されています。下浦の石工により建造されました。
180年余りを風雪に耐えて今に姿を残していることを思うと、その技術のすばらしさを感じます。以前は渡ることができましたが、現在は老朽化のため通行禁止になっています。
施無畏橋(県指定重要文化財)
祇園橋の架かった町山口川の上流にある「施無畏橋(せむいばし)」。長さ約22m、幅約3m。
染岳登山口にある無畏庵の参道として1871年(明治4年)に架けられましたが、その後崩壊し、1882年(明治15年)に再建されました。これも下浦の石工が建造しています。
橋の上は芝生に覆われ緩やかなカーブとなっています。歩いて渡ることができます。橋の上から眺めると、川の水面への映り込みが美しいですよ。
楠浦の眼鏡橋(県指定重要文化財)
最後は、天草市楠浦町にある「楠浦の眼鏡橋」。長さ約26m、幅約3m。
1878年(明治11年)に楠浦村の庄屋である宗像氏によって方原川に架けられました。方原川は度々氾濫し、人々を困らせていたため、頑丈な石橋を建造しました。ここでも下浦の石工が活躍しました。80日の工期で完成したそうです。下浦は楠浦の対岸ですから、石材の運搬もスムーズだったのかもしれないですね。
この橋も施無畏橋同様、芝生敷きで、歩いて渡ることができます。田園風景の中にとけこんだ石橋の姿は風情があります。
おまけ
石橋について調べていると、天草市立中央図書館である資料を見つけました。ファンタジー仕立てのマンガになっていて分かりやすいし、読みやすい。おすすめです。
『石をつぐもの-天草の下浦石工ものがたり-』
発行者:天草市観光文化部文化課
発行日:2018年3月
まとめ
2015年に「明治日本の産業革命遺産」で三角西港が世界文化遺産に登録されました。天草の近くだね、くらいの思いだったのですが、その建築に携わっていたのが下浦石と下浦石工だという話におどろきました。「下浦石」「下浦石工」どちらも天草の宝だと思いました。そのような石材でできた、今も天草に残っている石橋を見て、石工さんたちの技をあじわってみませんか。
■祇園橋
住所:天草市船之尾町1
アクセス:車 熊本駅~約2時間、九州自動車道松橋IC~約1時間40分、天草空港~約15分
■施無畏橋
住所:天草市本渡町本渡
アクセス:車 熊本駅~約2時間、九州自動車道松橋IC~約1時間40分、天草空港~約10分
■楠浦の眼鏡橋
住所:天草市楠浦町字中田原
アクセス:車 熊本駅~約2時間、九州自動車道松橋IC~約1時間40分、天草空港~約25分